今年(2019年)民法の相続規定が大きくかわりました

その目玉の一つが配偶者居住権の創設です

一言でいうと配偶者が居住していた居住建物を対象として

終身または一定期間 配偶者にその使用を認める法定の権利を創設し

遺産分割等における選択肢の一つとして

配偶者に所有権とはべつに居住権という権利を取得させ

配偶者は所有しなくても死ぬまでそれまで住み続けていた自宅に居住し続けられることができるようになった

というような権利の創設です

これによって配偶者が居住し続ける自宅については 居住権と所有権の二つの権利が存在することになった ということになります

不動産の評価は高額であることが一般的ですから 従前は自宅自体の評価額や相続財産に占める割合などから

配偶者が必ずしも遺産分割によって自宅を相続できるとは限らず 住み続けることができるか否かで大きな不安を持つこともありましたが

これによって住み続けられることになり配偶者が保護されることになったと言えます

この相続法の改正に対応する税制についてはどうなっているかというと

相続税法では配偶者居住権については相続税の課税対象としたうえで評価方法が定められました 

簡単に言うと配偶者の余命(配偶者居住権の存続年数)を考慮して居住権の評価をすることになっています

また居住権が設定された建物の評価は居住権評価額を控除して計算されますし

その居住権が設定された居住建物の敷地の利用に関する権利の評価額や

その敷地の評価についても定められています

しかし 配偶者の死亡によって配偶者居住権が消滅した場合の所有者に対する課税関係は

まだ特に定められていませんし

相続税の計算上大きな評価減を受けられる「小規模宅地等の特例」の適用関係も明確にはなっていません

また配偶者が生存中に権利放棄した場合についても(放棄できるとするとですが)

それによって利益を得ることになる所有者についての課税関係もまだ特にさだめられていません

このあたりの課税関係が明確になってくると 新たな節税に利用される余地も出てくる反面

高齢者施設に入所するなどの時に安易に居住権を放棄すると

思わぬ課税が生じる危険もでてくることになります

今後の通達等から目がはなせません