京都にはお客様をお迎えした時に 「おいでやす」という場合と「おこしやす」という場合があります

他の地方の方々から よくわからないと言われる京ことばの一つですが

「おいでやす」というのは 一見の客や不意の客に対して使われる言葉で

「おこしやす」とは事前に約束していたり 心待ちにしていた客に対して使われる言葉で歓迎のニュアンスがあります

京ことばと一口にいっても 舞子さんが話す言葉と一般の人が話す言葉は少し印象が違うでしょうし

昨今では そんなに”いかにも”な京ことばはあまり聞かなくなったように思われます

私たちも お客さまをお迎えした時にどちらの言葉でおむかえするのか おばあちゃんに注意された覚えはありますが

いまとなっては あまり意識しないで適当にお話しているようになっています

京ことばは「目~」(めえ~)「歯~」(はあ~)と母音をのばして発音しますし

「~しはる」とか(お芋さん)とか(おかゆさん)のように「お**さん」と身近な食べ物にたいしても「お」をつけてはなすなど

敬語のような表現や 婉曲的な言い回し も特徴とされています

はっきりと言わないので 「いけず」やと言われたり 「そんなにわかりにくい言い方をしないではっきり言って」と言われたりもしますが

京都人の感覚では そのようなニュアンスの言い方をするのは「角が立たない」ための配慮だと思っていますし

直接的に言わないのは言葉は和かにしつつ ちらっと本音を見せることにより 直接的にぶつかるような場面を回避すると思っています

それを「京のお茶づけ」などと「京都の人は本音を明かさないので付き合いにくい」などともいわれることになります

京都は長い間 目の前で権力者が移り変わっていく中で 平穏に無事に過ごすために 本音と建て前を使い分ける必要があった

などと分析されたりもします

私はコミュニケーションをスムーズにする必要も間違いなく本音や真実を伝えるための会話も大切にしたいと思いますが

この微妙なニュアンスでの日常会話は穏やかな日常を守るために やはり大切に伝えたいと思っています

それができるのは ある意味「文化」の成熟している証 と誰かに聞いた覚えがあります